水曜日, 12月 01, 2004

このアートの世界にないパラダイム


ニューヨークでの展覧会も無事終わった。先日のアートトークにはかつて芸大の助手であった北田克美先生も来て、手伝ってくださった。彼はニューヨーク大学での日本画に関する講義と保存についての研究のため、来米していた。

研究生、又修士、博士課程の学生として留学したとき、北田先生、そして斉藤典彦先生にはかなりお世話になった。あるとき突然北田先生が私ののアトリエを訪れた。私は二子玉川の風景を描いていたが、その作品を見て、彼は「恐ろしいほど美しいですね」と一言だけ言って、出ていってしまった。

この言葉は当時とても重く感じたことを私は今でも覚えている。アメリカで美術を学んだ私にとって、この言葉をどのように解釈すれば良いか戸惑ったのである。考えてみればみるほど、その重さに耐えられず、結局その作品を洗い落としてしまった。

その後、美を求める心の旅が、私の芸術を大きく影響するようなっていく。ポストモダーンと言われる考えには「美」を受け入れることのできる器はない。今日のアートはアイロニーかショックでしかコミュニケートできないのである。その中に「恐ろしいほど美しい」作品のメリットはない。

私は、そのために、何かこのアートの世界にないパラダイムを探し始めたのである。その旅は今、ニューヨークでも続く。


マコトフジムラ